公募研究は計画研究を補完し、領域が目指す統合生物考古学の学術的多様性を示すもので、基本的には各計画研究班の中に置かれます。公募予定の研究課題は、各研究班1件以上で、単年度あたりの採択件数は16件程度とし、予算を単年度5千万円と考えています。また、女性・若手研究者の育成という観点から、女性・若手研究者の積極的な応募を歓迎します。
本研究領域は、以下の11の研究項目より構成されます。
A01:考古学的方法による先史人類における社会構造の研究、
A02:ゲノム・形質による先史人骨間における遺伝的関係性復元の研究、
A03:同位体分析による先史人骨の年代・食性復元・移動の研究、
B01:日本列島域にいたる先史人類形成過程の解明、
B02:北海道における先史人類及び文化の形成、
B03:琉球列島における先史人類および文化の形成、
B04:本州・四国・九州域における先史人類および文化の形成、
B05:先史人類の人口動態に関する研究、
C01:日本列島域における古環境変遷の研究、
C02:先史人類による人為的環境形成(動物相)に関する研究、
C03:先史人類による人為的環境形成(植物相)に関する研究。
今回の公募研究は、領域全体の研究の幅を広げ、内容の高度化、質の向上を目的としたもので、基本的には各研究計画において、カバーできていない領域および範囲を重点的に募集するものです。可能であれば、複数の研究項目にまたがるような研究の応募を期待します。
応募上限額および採択目安件数は、200万円までが10件、500万円までが6件の合計16件になります。
各班の公募研究項目およびその内容は以下の通りです。
A01班研究項目:東日本における弥生時代の墓制、社会構造の研究
東日本(中部高地・東海地方以東)における弥生時代の墓制・社会構造について、分析・検討する研究を募集する。bioarchaeology的観点が含まれていれば、なお望ましい。
A02班研究項目:形態とゲノム情報による遺跡の生活環境および親族構造の研究
考古遺跡における人骨および土壌などから抽出しうる形態データあるいはゲノム情報を解析し、先史時代の人々を取り巻く生活環境(衛生・健康・食性)、遺跡を構成した人々の血縁関係、遺跡間の遺伝的交流、などを明らかにする研究を募集する。
A03班研究項目:同位体比のデータベース化・地図化に関する研究
古人骨や動物骨を対象とした、安定同位体分析の手法を用いた食性や移動に関する調査と、それらのデータベース化や地図化に関する試みが含まれている研究を募集する。
B01班研究項目:後期更新世の日本列島域における海岸線変化の高解像度復元の研究
日本列島周辺域の陸上・海底DEMデータを用いて、列島各域の隆起・沈降量の変異量を得たうえで、特に4〜1万年前における海外線変化をミレニアル・スケールで明らかにする研究を歓迎する。
B02班研究項目:集団形成論、民族・人種論、マルチスピーシーズ研究、環境変動研究
日本列島北部域における考古・人類・環境領域における実証的研究またマルチスピーシズ研究や高精度年代など新たな研究の視点を開拓するものや環境復元に関する手法の開発研究も歓迎する。
B03班研究項目:南西諸島および九州におけるヒト・モノ・コトの移動と交流に関する研究
琉球列島におけるヒトの移動や島嶼適応、周辺地域との文化交流について、様々なアプローチによる研究を募集する。
B04班研究項目:縄文・弥生・古墳時代の人の移動と地域間ネットワークに関する研究
縄文〜古墳時代におけるヒトの移動と地域間ネットワークについて、様々なアプローチによる研究を募集する。
B05班研究項目:弥生時代・続縄文時代の人口動態研究に関する研究
考古、人骨、環境などのデータをもとに弥生時代または続縄文時代における人口動態を実証的に解明する研究の応募を期待する。また、縄文時代も含む日本列島の先史人口動態に関する新たな分析やバイアス評価に関する手法の開発研究も歓迎する。
C01班研究項目:高精度気候変動情報に基づく先史時代の人の移動と動態に関する環境考古学的研究
酸素同位体比年輪年代法によって復元された高精度気候変動情報に基づいて先史時代の人の移動や動態を明らかにする環境考古学的研究の応募を期待する。酸素同位体比年輪年代法を用いた遺跡出土木材の年代決定、産地推定などの考古科学的研究も歓迎する。
C02班研究項目:日本列島域において人類と関わりのある動物の考古学研究またはゲノム解析研究
家畜、寄生的動物、狩猟対象など、人類が作り出す環境と深いかかわりがある動物に関する、考古学的手法またはゲノム解析を用いた研究の応募を期待する。古代ゲノム解析研究も歓迎する。
C03班研究項目:日本列島域において人類と関わりのある植物の考古学研究またはゲノム解析研究
栽培植物、採集植物、耕地雑草など、人類が作り出す環境と深いかかわりがある植物に関する、考古学的手法またはゲノム解析を用いた研究の応募を期待する。古代ゲノム解析研究も歓迎する。