長田 直樹

研究代表者
北海道大学・情報科学研究院・准教授

生物の歴史や進化に注目して、さまざまな生物の集団ゲノム解析を専門に行っています。本研究領域は、考古学とゲノム科学の共同作業により、日本列島におけるヒトと動物との関りを明らかにすることを目的としています。われわれの祖先が日本列島に住み始めたあとに、ヒトやモノの移動に伴って多くの動物がやってきました。ヒトの社会や文化も動物を利用することによって大きな変化を受けますが、一方、動物の方もヒトが作り出す環境に適応して進化を続けます。そのような人類と動物の相互作用の一端を明らかにできればと考えています。

班員(研究分担者)と担当研究テーマ

  • 佐藤孝雄(慶應義塾大学・文学部・教授):イヌを中心的対象とした動物考古学による人為的環境形成の研究
  • 本郷一美(総合研究大学院大学・統合進化科学研究センター・准教授):イノシシ・ブタを中心的対象とした動物考古学による人為的環境形成の研究
  • 寺井洋平(総合研究大学院大学・統合進化科学研究センター・准教授):ニホンオオカミ・イヌの古代ゲノム解析

研究概要

 日本列島に居住を始めて以来、先史人類は周囲の環境を改変しながら周囲の環境に適応してきました。その過程において、さまざまな野生生物が人類と片利/相利共生することにより、現在の環境が形成されてきました。また、人類活動に付随して日本列島に渡来したと考えられる動物がたどったルートを探ることは、過去に起こった人類集団の移動や文化交流の歴史を知る手掛かりにもなります。本研究計画では、日本列島域における古環境の形成と先史人類の適応について解明するために、以下の3つの動物群を中心的対象として研究を展開する予定です。①人類が作り出した環境に片利共生するコメンサルアニマルとして重要なネズミ類の遺伝的多様性をゲノム解析により調べ、渡来とその後のヒトの往来に伴う遺伝的交流についての推定を行います。②イヌの古代ゲノム情報から、時代ごとのイヌの形態と形質を復元し、その当時の人類との共生関係を明らかにしていきます。③野生イノシシと家畜化されたブタとの関連を、動物考古学的手法や現代・古代ゲノム解析によって明らかにしていきます。以上の研究をもとに、ゲノム科学と動物考古学の融合的なアプローチにより、新たな学問領域である統合生物考古学(integrative bioarchaeology)の構築に貢献することを目標としたいと考えています。