箱崎 真隆
研究代表者
国立歴史民俗博物館・研究部・准教授
年輪年代法と炭素14年代法を専門とする年代学者です。これらの高精度年代法によって、考古遺跡の営まれた年代、古建築の建築年代、極端災害の発生年代などを明らかにしてきました。人間が記録していなかった自然事象を樹木年輪から読み取ることで、日本列島の環境変動を、時空間的により高い解像度で明らかにしたいと考えています。
班員(研究分担者)と担当研究テーマ
- 坂本 稔(国立歴史民俗博物館・研究部・教授):暦年較正曲線構築、炭素14地域差の解明
- 篠崎鉄哉(東京大学・大学院理学系研究科・特任研究員):極端災害の高精度年代決定
研究概要
本研究では、先史時代の日本列島域の古環境変遷を「酸素同位体比年輪年代法」および「炭素14スパイクマッチ法」を用いて、1年の時空間解像度で復元する。特に①縄文時代早期と前期を画する破局噴火「鬼界アカホヤ噴火」の誤差0年の年代決定、②過去6400年間にわたる年単位の降水量および太陽活動の復元と両者の関係性の解明、③4200-4300年前に起きた大寒冷化イベント(4.2-4.3kaイベント)の気候復元と列島各地の影響評価を目的とします。そのために、屋久島の火山性埋没木の採集と炭素14スパイクの再現、日本各地から採集した自然埋没木および遺跡出土木材の網羅的な酸素同位体比分析と炭素14分析、同時間断面における地域間比較に基づく気候変動の面的な復元を実施する予定です。他班とも共同し、木材資料の新規獲得と年代決定を行い、より古く、より広い範囲まで古環境変遷の復元を進めつつ、他班に古環境・年代情報をフィードバックしていきます。本研究の達成によって、日本列島域における古環境の形成と先史人類の適応の解明へとつなげ、他班の研究成果と統合することにより、新たな学問領域であるintegrative bioarchaeology(統合生物考古学)の構築に貢献したいと考えています。