神澤 秀明
研究代表者
国立科学博物館・人類研究部・研究主幹
この十数年で、古人骨の全ゲノム研究は急速に発展し、今では人類史を解明するために欠かせない強力な分析手法となっています。私が大学院生だった頃には縄文人骨のミトコンドリアDNAの一部配列を分析していたことを考えますと、まさに世界が変わったと言えます。今度は、考古学的手法との連携によって、我々は本州・四国・九州域の先史人類および文化の形成の解明を目指し、integrative bioarchaeology(統合生物考古学)の構築に貢献していきます。
班員(研究分担者)と担当研究テーマ
- 中村耕作(国立歴史民俗博物館・研究部・准教授):縄文文化の地域間関係分析
- 濵田竜彦(明治大学・研究知財戦略機構・研究推進員):弥生時代の地域間関係分析
- 清家 章(岡山大学・社会文化科学学域・教授):古墳時代の地域間関係分析
- 米元史織(九州大学・総合研究博物館・助教):弥生・古墳時代の形質的特徴の研究
- 安達 登(山梨大学・大学院総合研究部・教授):古人骨からのDNA抽出およびミトコンドリアDNA分析
- 角田恒雄(山梨大学・大学院総合研究部・特任助教):古代人ゲノム解析
研究概要
本研究は、自然人類学(古代人ゲノム・形態)および考古学(遺構・遺物)の融合により、ヒトと文化の両面から日本列島の先史時代人の人類史を解明するものです。本州・四国・九州域の古人骨の全ゲノム解析から、縄文時代から現代に至る地域性を詳細に示すとともに、弥生時代以降に列島に渡来した人々のルーツ及び、在地集団との混血がどのように進行したのかを明らかにしていきます。また、これらの先史時代人の集団形成を可能にした地域間ネットワークについて、地域間を横断する縄文時代の祭祀儀礼に関わる文化要素や、弥生・古墳時代の埋葬遺跡にみられる埋葬属性の検討を行い、そこから先史人類の形成過程や広域交流、さらには当該期の埋葬原理から国家形成に至る社会構造を明らかにすることにより、新たな学問領域であるintegrative bioarchaeology(統合生物考古学)の構築に貢献したいと考えています。