出穂 雅実

研究代表者
東京都立大学・人文科学研究科・准教授

私は、ユーラシア東部と北アメリカの後期更新世における現生人類の初期拡散とその後の文化的多様性の形成を明らかにすべく、研究に取り組んでいます。これまで、全球の気候変動に伴う地域生態系変化と、文化的パターンの対応を明確にしてきました。B01班は、遺伝学、古気候学、古生態学、考古学の研究を体系的に統合し、総合的で革新的な後期更新世人間−自然相互作用環の時・空間変化モデルの構築を目指します。

班員(研究分担者)と担当研究テーマ

  • 森先一貴(東京大学・大学院人文社会系研究科・准教授):東アジア大陸部と列島の文化的パタンモデルの構築
  • 岩瀬 彬(東京都立大学・人文科学研究科・助教):列島における現生人類植民の定着と移動パタンの復元
  • 大橋 順(東京大学・大学院理学系研究科・教授):ユーラシア東部の遺伝集団の動態モデルの構築
  • 長谷川精(高知大学・教育研究部自然科学系理工学部門・准教授):ユーラシア東部陸域の海洋酸素同位体ステージ3-2の気候変遷復元
  • 勝田長貴(岐阜大学・教育学部・准教授):日本列島域の海洋酸素同位体ステージ3-2の気候変遷復元
  • 志知幸治(森林総合研究所・主任研究員):ユーラシア東部の植生変遷

研究概要

 本研究では、後期更新世(特に5万年前以降)における、現生人類のユーラシア東部から日本列島への拡散、定着、変化、移動、撤退、消滅とその理由を探るため、文化証拠、古環境証拠、古代DNA証拠の実証的研究を行います。分析対象地域は、気候メカニズムが異なる内陸アジア、環日本海、及び日本列島太平洋沿岸に3区分し、地域毎に各証拠の復元と対比を行う予定です。この作業を通じて、後期更新世におけるユーラシア東部の現生人類集団の社会的・遺伝的変化と自然環境変化を総合的に説明する変遷モデルを構築していきます。
 さらに本研究班では、A01〜03・B02〜05班と連携して、後期更新世におけるユーラシア東部から日本列島への現生人類集団の拡散と適応のレガシーが、完新世における日本列島の集団形成にどう影響したのかを明確化させる予定です。また、C01~03班と連携して後期更新世から完新世への人類生態系変化を明確化することで、日本列島域にいたる先史人類文化形成過程を解明し、新たな学問領域である統合生物考古学(integrative bioarchaeology)の構築に貢献したいと考えています。