山田 康弘

研究代表者
東京都立大学・人文科学研究科・教授

考古学は蓋然性の学問です。どのような考え方が、当時の実態に一番近いのか、その点を考えながら研究を進める学問です。しかしながら現在では年代測定、炭素・窒素同位体分析、ストロンチウム同位体分析、DNA分析といった理化学的分析を考古学的分析と並行して行うことによって、より真実に近づくことができるようになりました。本領域研究において、A01班は考古学的方法によって先史人類の社会構造について研究を行い、人類学的な手法によって検証すべき仮説を提示する役割を担っています。

班員(研究分担者)と担当研究テーマ

  • 青野友哉(東北芸術工科大学・芸術学部・准教授):東日本縄文墓制・社会の研究
  • 舟橋京子(九州大学・比較社会文化研究院・准教授):西日本縄文弥生墓制・社会の研究
  • 日高 慎(東京学芸大学・教育学部・教授):東日本古墳時代墓制・社会の研究
  • 辻田淳一郎(九州大学・人文科学研究院・准教授):西日本古墳時代墓制・社会の研究

研究概要

 A01班は、考古学的方法によって先史人類の社会構造について研究を行い、人類学的な手法によって検証すべき仮説を提示する役割を担っています。具体的には、各地の先史時代(文字を主体的に用いていないという点から、旧石器時代・縄文時代・弥生時代・古墳時代を指し示す語句として用います)の遺跡における墓地・墓域において、考古学的な観点からこれまで家族や世帯の埋葬地点と目されてきた墓群(人骨の集中地点)や、階層性を示すと思われる墓群および特定個人を抽出し、考古学的な埋葬属性(埋葬地点・埋葬姿勢・頭位方向・装身具、副葬品の有無と種類、抜歯系統など)を検討することによって、当該遺跡が属する時代の親族・社会構造について考古学的仮説を立てていきます。さらに、A02班およびA03班等と連携し、年代測定、炭素・窒素・ストロンチウム同位体分析、DNA分析を行うことによって、その仮説の検証を目指します。また、ここで提示された仮説はB班・C班とも共有され、検証すべき課題となります。本研究班は検証すべき先史社会モデル仮説を提示することによって、日本列島域における先史人類社会の解明へとつなげ、他班の研究成果と統合することにより、新たな学問領域であるintegrative bioarchaeology(統合生物考古学)の構築に貢献したいと考えています。