上 奈穂美
研究代表者
国立歴史民俗博物館・科研費支援研究員
研究概要
カラフトブタ(Sus sp., Sus inoi)とは、サハリン・北海道を中心に、オホーツク文化期でのみ出土が限られるイノシシ類を指します。同種に対しては、形質的特徴や動物地理学的な視点から、東アジアからサハリン経由で北海道へ移入された家畜という仮説[直良、1937]が提示されてきました。その後、形質の特徴や出土傾向等の検討[西本、1978;金子・西本、1987;内山、2003]の他、近年には分析技術の飛躍的な向上により、系統解析[Watanabe et al.,2001;石黒・渡部、2005]や、歯の観察や形態等の検討[服部・澤田・佐藤 、2013]、食性同位体分析[蔦谷、2018;2022]等も実施され、同仮説の妥当性が補強されてきています。一方で、ブタが一旦各地に展開しながらも、なぜ時期を経て消滅したのかについては未だに明らかではありません。
本研究では、カラフトブタ資料に対して理化学的分析を実施し、考古学的解釈を加えることで、オホーツク文化の家畜導入の経路の追究、飼養実態(給餌方法・繁殖管理等)の推定、消長の要因解明をめざします。具体的には、以下4点の検討課題に取組みます。なお、本研究は、学術変革領域研究(A)B02班(班代表:加藤博文教授)や、他班の研究分担・協力者の協力を得て進めていきたいと思います。
➀ 家畜導入の時期差・地域差、消長 (動物考古学的分析)
➁ 給餌内容の時期差・地域差 (炭素14年代測定・食性同位体分析)
➂ 試料間の系統解析 (古DNA分析)
➃ カラフトブタ頭骨の形態的特徴、繁殖管理・育種の程度 (形態学的分析)